◾️政府は増加する老朽マンションの改修を進めやすくするため、分譲マンションの修繕方針などを決める住人総会について出席者の過半数の賛成で決議できるよう法改正を検討する。現在は欠席を反対とみなしている。(日本経済新聞2023.5.1)
⚫︎法務大臣の諮問機関である法制審議会(法制審)で議論し、24年度にも区分所有法の改正を目指す。国土交通省によると、築30年以上の分譲マンションは21年末時点で全国に249万戸ある。20年後にはおよそ2.4倍の588万戸になる見通し。
⚫︎ほぼ全てのマンションは建設から30年経つまでに少なくとも1回は大規模修繕をする。適切な時期に修繕しないとマンションの価値が落ち、所有者離れにつながる。老朽化を放置すれば外壁が剥がれて落下するような事故も起きかねないので、修繕決議の要件を緩和して改修を後押しする。
⚫︎不動産調査会社の東京カンテイ(東京・品川)によると、中古マンションの全国の市場規模はおよそ3.4兆円(22年10月~12月)だった。19年同期に比べると新築マンションが1割近く減少した一方で、中古は3割ほど拡大した。古いマンションでも管理が行き届いていれば地域に人を呼び込む魅力となる。
⚫︎マンションは共用部分などを修繕する際、区分所有者で構成する管理組合の集会での決議が要る。物件管理に無関心な住人や別の場所に住んでいて連絡がつかない人がいると欠席者が多くなる。現在は欠席して委任状や議決権行使書よる賛意表明もなければ、反対として扱うため、改修などに必要な決議ができないケースがある。特に大規模マンションで出席が少ない場合傾向がある。都内のタワーマンションの3割程度は出席率が7割未満という調査がある。
⚫︎法制審は、所有者の4/5の賛成が必要な建て替えに関する決議の要件緩和も議論する。所有者の所在がわからない場合は、決議の参加対象から除外する案がある。多数決の要件を3/4以下に引き下げることも検討する。
⚫︎建物の構造を変えるような大規模改修に必要な要件も緩める方向だ。現在は区分所有者の3/4以上の同意が必要だが、出席者の3/4で可能にすべきだとの意見がある。
⚫︎マンション管理規約の変更も同様に緩和を協議する。防犯や災害対策で規約を変更する必要性が増えており、決議の円滑化を求める声があがる。日本マンション管理士会連合会は、「投資用での保有が増えている都市部では規約変更できない事例が出ている」と話す。
まとめ
マンション修繕促進へ検討する法改正
⚫︎新規検討
共用部分の修繕 (現行)所有者の過半数の賛成が必要。(欠席者は原則「反対」扱い)
(改正後)出席者の過半数で決議可能
⚫︎新規検討及びすでに検討中
建て替え (現行)所有者の4/5の同意で決定
(改正後)所有者の3/4以下の同意で決定(所在不明者を住人決議の対象から除外)
⚫︎すでに検討中
専有部分のリノベーション (現行)所有者全員の同意で決定
(改正後)建て替えと同様の要件へ緩和
(宅建しずおか2023.8月号)